最終更新:2026年9月/看板の撤去・原状回復を実際に施工している立場から作成
看板の撤去費用は看板の種類・設置高さ・処分量の3つでほぼ決まります。壁付けの小型プレート看板なら3万円台から、基礎の解体を伴う大型ポールサインでは100万円を超えることもあります。
そして、テナント退去時の原状回復で最も重要な事実。店舗・オフィスなどの事業用賃貸は、住居用とルールが違います。国土交通省の原状回復ガイドラインは適用されず、「どこまで戻すか」は契約書の記載が実質的にすべてを決めます。
閉店、移転、リニューアル。理由はさまざまですが、看板の撤去は「決まってから慌てて調べ始める」ことがほとんどです。
そして見積もりを受け取って驚かれます。「板を外すだけなのに、なぜこの金額なのか」と。実際のところ、撤去費用の大半は看板本体ではなく、高所作業車と産業廃棄物の処分費、そして壁の補修が占めています。ここを知らずに1社だけの見積もりを見ると、高いのか妥当なのか判断できません。
この記事では、撤去費用の内訳を項目ごとにすべて開示したうえで、テナント退去時にどこまでが借主の義務なのかを、契約書の読み方まで含めて整理します。貸主側・借主側どちらの立場でも判断材料になるように書きました。
この記事の内容
看板撤去の費用相場|種類別の目安
まず金額感からお伝えします。以下は一般的な条件(1階〜2階程度の高さ、車両を停められる前面道路あり、標準的なサイズ)での目安です。
| 看板の種類 | 撤去費用の目安 | 費用を左右する要素 |
|---|---|---|
| ウィンドウサイン カッティングシート |
1万〜5万円 | 面積、糊の残り具合、経年による硬化 |
| プレート看板 (壁面・小型) |
3万〜8万円 | 設置高さ、アンカーの本数、壁の補修範囲 |
| 突き出し看板 (袖看板) |
5万〜15万円 | 高所作業車の要否、道路使用許可、鋼材の量 |
| ファサード看板 (内照式・間口3〜5m) |
8万〜25万円 | 電源の切り離し工事、下地の解体範囲 |
| 自立看板 (小〜中型) |
15万〜50万円 | 基礎の撤去有無、支柱の太さ、重機の要否 |
| 大型ポールサイン (基礎解体を含む) |
50万〜150万円 | 基礎コンクリートの量、掘削と復旧、交通誘導 |
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この表の使い方
金額はあくまで一般的な目安です。同じファサード看板でも、道路に面していて交通誘導員が必要な現場と、駐車場から直接作業できる現場では倍近く変わります。「自分の看板がいくらになるか」は現地を見ないと出せない、というのが正直なところです。ただし内訳の構造は共通なので、次の章で見積書の読み方をお伝えします。
撤去費用の内訳をすべて開示します
看板撤去の見積書は、だいたい次の項目で構成されています。この構造さえ分かれば、他社の見積もりが妥当かどうかも自分で判断できます。
| 項目 | 金額の目安 | 内容 |
|---|---|---|
| 撤去作業費(人工) | 2万〜3万円/人日 | 職人の作業費。小型看板なら2名半日、大型なら2〜3名で1〜2日 |
| 高所作業車 | 5万〜10万円/日 | オペレーター込み。2階以上の高さがあればほぼ必須 |
| 足場 | 800〜1,500円/㎡ | 作業車が入れない立地の場合。組立・解体・運搬を含む |
| 産業廃棄物処分費 | 1万〜5万円 | アルミ複合板、アクリル、鋼材、電飾内部の部材など。混合廃棄物として処理 |
| 電気工事 | 1.5万〜5万円 | 電飾看板の電源切り離し、配線の撤去、端末処理 |
| 壁面の補修 | 2万〜10万円 | アンカー穴の埋め戻し、下地補修、タッチアップ塗装 |
| 道路使用許可・交通誘導 | 1.5万〜4万円 | 路上での作業が必要な場合。警備員の人件費を含む |
| 諸経費 | 工事費の10〜15% | 運搬、養生、現場管理費など |
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現場から一言
「看板を外すだけなら安いでしょう」と言われることがありますが、実は撤去のほうが新設より手間がかかる場面があります。新設は下地から自分たちで作れますが、撤去は何年も前に別の業者が付けたものを、構造が分からないまま外すからです。開けてみたらアンカーが想定の倍打たれていた、下地の木材が腐って壁ごと崩れそうだった。そういうことが普通に起こります。
見積もりの段階で「現地を見せてください」と言う業者は、この不確実性を分かっている業者です。写真だけで即答してくる会社は、当日に追加請求が発生する可能性があります。
費用が跳ね上がる5つの条件
見積もりが想定より高くなるのは、たいてい次のどれかに当てはまっています。
1. 高所作業車が入れない立地
前面道路が狭い、アーケード内にある、電線が邪魔で車両のブームが伸ばせない。こうした現場では足場を組むことになり、それだけで数万円から十数万円が上乗せされます。福岡でいえば中洲や大名の路地裏のような、車両が寄せられない立地がこれに該当します。
2. 基礎の解体が必要な自立看板
ポールサインの地中にはコンクリート基礎があります。これを掘削して撤去し、アスファルトや土を元に戻す作業は、看板本体の撤去とは別の工事です。「支柱を地際で切って残す」ことが認められれば大幅に安くなるので、貸主に確認する価値があります。
3. 壁面の補修範囲が広い
看板を外すと、その部分だけ壁の色が新しく残ります。周囲は日焼けしているので、境目がはっきり出ます。アンカー穴を埋めるだけで済むのか、面で塗装をやり直すのか。ここが数万円と数十万円の分かれ目です。契約書に「壁面を含めて原状回復」と書かれていると、全面塗装を求められることがあります。
4. 処分量が多い
内照式の大型看板は、外から見えている面板の裏に、鋼材のフレーム、安定器、大量の配線が入っています。分解して分別しながら降ろす必要があり、廃棄物の量も見た目の印象よりずっと多くなります。
5. 工期に余裕がない
明渡し日の直前になると、高所作業車の手配が取れない、職人が押さえられないという状況が起きます。割増になるだけでなく、最悪の場合は間に合わず、賃料が1ヶ月余分に発生します。この「間に合わない」が、実は最大のコスト増要因です。

テナント退去の原状回復は、どこまでが借主の負担か
撤去費用と並んで問題になるのが、「そもそもどこまで戻す義務があるのか」です。ここを曖昧にしたまま工事を発注すると、後から追加請求が発生します。
最も重要な前提をひとつだけお伝えしておきます。国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」は居住用の賃貸借を対象としたもので、店舗やオフィスなどの事業用賃貸には直接適用されません。ネットで見つかる原状回復の情報は大半が住居用の話であり、テナント退去にそのまま当てはめると判断を誤ります。
事業用では消費者契約法が適用されないため、通常損耗や経年劣化まで借主が負担するという特約も有効と扱われるのが一般的です。つまり「どこまで」を決めるのは法律の一般論ではなく、賃貸借契約書の記載ということになります。
契約書のどこを読むべきか、アンカーや外壁塗装、防水層といった部位ごとにどこまでが借主負担になるのか、貸主指定業者への対応や交渉の進め方は、テナント退去時の看板の原状回復はどこまで必要かで詳しく解説しています。見積書を受け取って妥当性を判断したい方は、あわせてご覧ください。
撤去して終わりではない、必要な届出
看板を物理的に外しただけでは、手続きは完了しません。
| 届出 | 内容 | 提出先 |
|---|---|---|
| 屋外広告物除却届 | 許可を受けていた看板を撤去したときに提出。出さないと書類上は設置されたままになります | 設置場所の自治体 (福岡市は都市景観室) |
| 道路占用の廃止届 | 突き出し看板など、道路上に出ていた看板の占用を終了する届出 | 道路管理者 (区役所・国道事務所等) |
| 電気の廃止手続き | 看板用に別契約の電源を引いている場合 | 電力会社 |
福岡市の場合、屋外広告物除却届は様式第6号で、オンラインでも提出できます。許可申請まわりの詳しい手順は福岡市の屋外広告物 許可申請のやり方にまとめていますので、あわせてご確認ください。
明渡し日からの逆算スケジュール
前述の通り、間に合わないことが最大のコスト増につながります。実務上の目安として逆算表を作りました。
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明渡し日の2ヶ月前:契約書を読み、貸主に確認する
原状回復の範囲、指定業者の有無、壁面の扱い。ここを曖昧にしたまま進めると、後から追加工事になります。
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1.5ヶ月前:現地調査と見積もり取得
指定業者がなければ2〜3社。現地を見ずに金額を出す会社は避けてください。
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1ヶ月前:工事内容を貸主と書面で合意し、発注
「どこまでやるか」を文書に残します。口頭合意は退去時に必ず食い違います。
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2〜3週間前:許可・車両の手配
道路使用許可の申請、高所作業車や交通誘導員の確保。繁忙期はここが取れません。
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1週間前〜数日前:撤去工事
通常は1日、大型や基礎解体を伴う場合は2〜3日。
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工事後すみやかに:各種届出と立会い
除却届の提出、貸主の完了確認。完了写真を残しておくと後日のトラブルを防げます。
閉店の公表前でも相談できます
「まだ従業員にも言っていないので動きにくい」というご相談をよくいただきます。現地調査は営業時間外や定休日にも対応できますし、社名の入った車両を使わないなどの配慮も可能です。段取りだけ先に決めておくと、公表後の動きが一気に楽になります。
費用を抑える現実的な4つの方法
1. 撤去と新設をまとめて1社に依頼する
移転やリニューアルで「古い看板を外して、新しい看板を付ける」場合、別々の会社に頼むと高所作業車代・交通誘導費・職人の出張費がそれぞれ二重にかかります。同じ日に同じ職人が続けて作業すれば、この重複がまるごと消えます。金額にして数万円から十数万円の差です。
2. 撤去範囲を貸主と交渉する
自立看板の基礎を残せないか。壁面は部分補修で認めてもらえないか。次のテナントも同じ位置に看板を出す可能性が高いなら、下地を残したほうが貸主にとっても好都合な場合があります。交渉の余地は思っているより広いものです。
3. 複数の看板をまとめて撤去する
ファサード看板、突き出し看板、ウィンドウサイン、スタンド看板。別々に発注すると、そのたびに出張費と諸経費が発生します。同日にまとめれば1回分で済みます。
4. 早めに動く
結局これがいちばん効きます。工期に余裕があれば、作業車の空いている日程を選べますし、他の現場と合わせて職人を回すこともできます。逆に「来週までに」と言われると、あらゆる手配が割増になります。
移転やリニューアルで撤去と新設の両方が必要な場合は、まとめてご相談ください。看板デザインの作成から製作・施工まで自社で一貫対応しているため、撤去だけを外注する場合より総額を抑えられます。過去の事例は看板施工事例でご覧いただけます。
撤去する前に「残す」という選択肢
最後に、貸主・ビルオーナー様に向けた話です。
「見た目が古くなったから撤去しよう」と判断される前に、一度点検をおすすめします。屋外広告物は屋外にある以上いずれ劣化しますが、構造体が健全で、劣化しているのが表面のシートや面板だけであれば、部材交換や表面のリニューアルで延命できるケースが少なくありません。
支柱やフレームがまだ使えるのに全部撤去して新しく作り直すのは、費用の面でももったいない選択です。逆に、外見はきれいでも取付金具の内部が腐食していて、撤去や補強が急務という看板もあります。とくに海に近い福岡では塩害でボルトが痩せやすく、外から見ただけでは判断できません。
この判断のためには、専門家が実際に構造部を確認する必要があります。加えて、屋外広告物の許可を更新する際、設置から5年以上が経過している看板には安全点検確認書の提出が求められます。点検はどのみち必要になるものです。
撤去すべきか、残せるか。まず点検で判断します
支柱・取付金具・アンカー・電気系統まで確認し、安全点検確認書の作成から、部材交換による延命、撤去の判断までご提案します。「いつ設置したか分からない」「前の業者と連絡が取れない」看板でも問題ありません。福岡県内はもちろん、九州全域・全国の拠点網でお伺いします。
よくある質問
看板の撤去は自分でやってもいいですか?
スタンド看板やのぼり旗のような置き型のものは問題ありません。しかし壁面や高所に固定された看板は、落下事故のリスクがあるうえ、外した後の壁の処理や産業廃棄物の適正処理まで必要になります。看板の廃材は一般ごみとして出せません。人身事故が起きれば設置者の賠償責任も問われますので、固定された看板は業者にご依頼ください。
看板だけ撤去してもらうことはできますか?内装工事は別業者です。
可能です。内装の原状回復とは別に、看板部分だけを分けて対応できます。むしろ看板の撤去は高所作業や電気工事、屋外広告物の届出が絡むため、内装業者ではなく看板の専門業者が扱ったほうが確実です。内装業者の見積もりに看板撤去が含まれている場合、その部分だけ切り出して相見積もりを取ることもできます。
前のテナントが設置した看板も、私が撤去する義務がありますか?
契約上の「原状」がいつの時点かによります。原状の基準が引渡し時の状態であれば、引渡し時点で既に存在していた造作物は原則として借主の撤去対象ではありません。ただしそれを証明できるのは入居時の写真です。写真がなく、契約書にも記載がない場合は貸主との協議になります。前テナントの造作を引き継いで使用していた場合は、引継ぎ時の合意内容も確認してください。
貸主から提示された撤去費用が高い気がします。どうすればいいですか?
まず内訳の開示を求めてください。「原状回復工事一式」といった記載だけでは妥当性を判断できません。項目ごとの数量と単価を出してもらい、この記事の内訳表と照らし合わせると、どこが高いのかが見えてきます。指定業者条項があって相見積もりが取れない場合でも、内訳を確認して交渉することは可能です。技術的な観点での妥当性チェックはお手伝いできます。
看板の撤去にかかる期間はどれくらいですか?
工事自体は、一般的な店舗看板であれば1日で完了します。大型の自立看板で基礎の解体を伴う場合は2〜3日です。ただし現地調査、見積もり、貸主との合意、道路使用許可の申請、作業車の手配を含めると、ご相談から工事完了まで3週間から1ヶ月をみておいてください。
福岡以外の店舗も同時に撤去してもらえますか?
対応可能です。当社は全国に拠点を構えており、複数店舗の一斉撤去や、閉店に伴う全店対応の実績があります。エリアごとに業者を探して個別に発注する手間がなくなり、窓口が一本化されるぶん進行管理も楽になります。九州全域はもちろん、全国どこでもご相談ください。
撤去した看板を、移転先で再利用できますか?
構造体の状態と、移転先の設置条件次第です。分解して運べる形状であれば再利用できる場合もありますが、取付部の寸法が合わない、移転先の自治体の規格基準に適合しないといった理由で使えないこともあります。まずは現況を確認させてください。再利用が難しい場合でも、既存デザインを引き継いだ形での作り直しはご提案できます。
まとめ
- 撤去費用は看板本体ではなく、高所作業車・産廃処分費・壁面補修で大半が決まる
- 見積書は項目ごとの内訳を確認する。「一式」だけの見積もりは妥当性を判断できない
- 事業用テナントに国交省の原状回復ガイドラインは適用されない。契約書の記載がすべて
- 「原状」の基準を証明できるのは入居時の写真だけ。これから入居する方は必ず撮影を
- 撤去後は屋外広告物除却届などの手続きが残る
- 撤去と新設をまとめれば、作業車と職人の重複費用がなくなる
退去に伴う看板の撤去は、閉店や移転の準備で最も忙しい時期に重なります。しかも一度きりの経験なので、判断の基準を持ちにくい。そこで損をされる方を、私たちは何度も見てきました。この記事が、その判断の材料になれば幸いです。
看板の撤去・原状回復・リニューアル、まとめてご相談ください
現地調査から撤去工事、壁面補修、各種届出まで一貫対応。移転やリニューアルであれば、新しい看板のデザイン作成から製作・施工まで同じ窓口で完結します。福岡県内全域から九州エリア、そして全国の拠点網でどこでもお伺いします。「この金額は妥当なのか」というセカンドオピニオンのご相談も歓迎します。
出典・参考
- 民法第621条(賃借人の原状回復義務)
- 最高裁判所 平成17年12月16日 第二小法廷判決(通常損耗の原状回復特約に関する判例)
- 国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」※居住用賃貸借を対象としたもの
- 福岡市「屋外広告物の許可申請について」
※本記事に記載の金額はすべて一般的な目安であり、現場条件により変動します。正確な費用は現地調査のうえお見積りいたします。また本記事は看板施工の実務に基づく解説であり、法律上の助言ではありません。契約に関する具体的な争いについては弁護士等の専門家にご相談ください。






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